中央アメリカで最も小さい国、エルサルバドル。
ただし、エルサルバドルは、プレミアムコーヒーの生産地として知名度が高い国です。
コーヒー大国グアテマラとホンジュラスのお隣でもあります。
人口は約664万人。中米で最も広いニカラグアより多くなっています。
今回は、エルサルバドルのコーヒー豆の特徴についてみてみましょう。
INDEX
エルサルバドルのコーヒー豆の特徴
- エルサルバドルのコーヒー年間生産量:80,167トン
- 世界シェア:約0.8%
- 生産国量ランキング:17位
※2018年度調査(FAO国連食糧農業機関による統計より)
中央アメリカには、良質なコーヒー豆の生産国が多いですが、エルサルバドルもその一つ。
スペシャリティコーヒー産出国として、定評のあるコスタリカの次に生産量が多い国です。
コーヒー豆産地としてのエルサルバドル
エルサルバドルの国土は、日本の四国よりも少し広い約2万㎢。
国土は広くありませんが、熱帯性気候と火山地帯での高地栽培は、コーヒーの栽培に非常に適しています。
エルサルバドルは火山の国で、20以上もの火山が存在するのだそう。
必然的に、コーヒー栽培は活火山の斜面で行われることが多いです。
サンタアナ火山が噴火したときのように、時には多くの農園が火山被害を受けることはありますが、ミネラルが豊富な火山灰性の土壌は、天然の肥料となってコーヒーの発育を助けています。
代表的な栽培地域は、西部のサンタアナ州、アウアチャパン州、ソンソナテ州などのサンタアナ火山の周辺。
また、首都のあるサン・サルバドル州、ウルスタン州などでも広範囲で栽培されています。
標高1,200m~1,800mの高地栽培が多く、シェイドツリーによる日陰栽培を実践しています。
エルサルバドルのコーヒー豆の歴史
エルサルバドルのコーヒー豆の歴史は、この国の経済的な発展の歴史でもあります。
スペインによる植民地時代にラテンアメリカ諸国へ伝わったコーヒーは、エルサルバドルでは当初、国内消費用として栽培されました。
しかし、植民地支配が終わると、政府は外貨獲得に有効な手段としてコーヒー豆の栽培を積極的に奨励します。
国有地の2/3をコーヒー生産者に無償で提供し、コーヒー栽培を大々的に推し進めました。
また、コーヒー生産者に対して、税金控除や兵役の免除、輸出課税をなくすなどの優遇措置も行ったため、エルサルバドルのコーヒー産業は急成長。
1920年頃には、国の輸出額の9割をコーヒーがしめる様になりました。
しかし、エルサルバドルコーヒー産業は、常に順風満帆というわけではありませんでした。
世界情勢に左右された時期や、1980年代は内戦が続き、不安定な情勢からコーヒー生産量と輸出量は減少したことも。
また、さび病の影響で収穫量が激減したこともあります。
しかし、その後も、研究熱心なコーヒー生産者は諦めることなく、新しい品種の研究開発だけでなく、技術、設備インフラの投資を怠っていません。
また、2003年からは、カップ・オブ・エクセレンスを開催してさまざまなプレミアムコーヒーを世界に広めています。
エルサルバドルのコーヒー豆栽培
エルサルバドルのコーヒー豆の主な品種は、「ブルボン」や「パカス」、「カトゥーラ」。
特に、伝統的なブルボン種は全体の6割ほどを占めています。
また、エルサルバドルでは、バライエティにとんだコーヒー品種の開発が盛んで、さまざまな品種が栽培されています。
中でも、特に有名なのが「パカマラ」。
国内で発見のパカスとブラジル原産のマラゴジッペを交配させた「パカマラ」は、とても価値の高いコーヒー豆として扱われています。
コーヒーの栽培にかかわる人口は、約1万9000人。
コーヒー農家の多くは、ほとんどが中小規模で、4~20ha未満の農園でコーヒーの日陰栽培をしています。
コーヒーチェリ―の収穫は、10月~翌3月。
多くの農園で採用されている精製方法は、ウォッシュト(水洗式)です。
しかし、中にはコスタリカ産コーヒーのように、パルプトナチュラル(半水洗式)のハニープロセスで、コーヒーの旨味を調節している農家も少なくありません。
ウォッシュトでは、収穫したコーヒーチェリーをまず水で洗い流し、“ミューシレージと呼ばれるヌルヌルとした粘液質を取り除きます。
水を大量に必要とするのがデメリットですが、欠点豆が少なく、クリーンで均一な豆が精製できるのが大きなメリットです。
エルサルバドルのコーヒー豆の味の特徴
エルサルバドルで主流のブルボン種は、強すぎない酸味とフルーティな香り、そして穏やかな甘みが特徴です。
そのマイルドな飲み口は、コーヒー特有の酸味や苦みが得意ではない人でも、すっきりと飲めてしまう味わいと言えるでしょう。
また、とても大きな粒が目をひくパカマラ種は、全般的にボディ感や香り、風味に優れたコーヒーで、スパイシーな酸味が特徴。
そして、ハチミツやチョコレート、キャラメルのような丸みのある甘みとコクが魅力です。
一度飲んだら、忘れられないプレミアムコーヒーです。
エルサルバドルのコーヒー豆は、世界のバリスタ大会でも頻繁に使用されるほど、高品質で繊細な味わいを表現してくれます。
また、グアテマラ産のコーヒー豆同様に、ストレートだけでなくブレンドのベース豆としても優秀なパフォーマンスを発揮します。
おすすめの飲み方
コーヒー豆そのものの魅力を楽しむなら、浸漬式の抽出方法を試してみてはいかがでしょうか。
浸漬式の抽出方法の代表格が、フレンチプレス。
深煎り、中粗挽きにして入れてみてください。
粉で販売しているものの中には、細挽きのものもあり、フレンチプレスで使用すると粉っぽさが残るでご注意ください。
次におすすめの方法は、コーヒー好きのアウトドア派に最適なパーコレーター。
パーコレーターは、水と挽いたコーヒーをポットに入れて直火で沸騰させて抽出する方法です。
煮だしても、複雑な味わいとコクが表現されるコーヒーは逸品です。
もちろん、ハンドドリップでもエルサルバドルコーヒーの味を十分に楽しめます。
手持ちのドリッパーを駆使していれてみてください。
エルサルバドルのコーヒー豆の等級について
エルサルバドルのコーヒー豆は、基本的に生産地域の標高で豆の等級が決められています。
ただし、実際の評価は、栽培農園名や精製方法によっても大きく変わってきます。
等級 | 条件 |
SHG(ストリクトリーハイグロウン) | 標高1200m以上の最高級グレード |
HG(ハイグロウン) | 標高900m~1200m未満 |
CS(セントラルスタンダード) | 標高600m~900m未満 |
おすすめのエルサルバドルコーヒー~ラ・レフォルマ農園
高級なパカマラ種の栽培に特に力を入れている、リベラ社所有の「ラ・フィンコナ農園」。
エルサルバドル中北部、チャラテナンゴ州の高原にあります。
真っ赤な完熟豆だけを丁寧に収穫し、ウォッシュト処理で加工されたパカマラは、複雑で繊細なフレーバーを持ち、明るい酸味とジューシーな口当たり、そしてまろやかな甘みが特徴です。
ラ・フィンコナ農園のパカマラコーヒーは、2018年のエルサルバドルCOEで89点という高得点を得たスペシャリティコーヒー。
その高級な生豆を、2018年の日本のSCAJ主催ロースティング大会優勝の敏腕ロースターが丁寧に焙煎しています。
パカマラ種にハマること間違いなし?!正真正銘の一流コーヒーです。
おすすめのエルサルバドルコーヒー~サンタ・リタ農園
サンタアナ火山の山裾、西部のソンソナテ州も、有名なエルサルバドルコーヒーの産地です。
サンタ・リタ農園のコーヒーは、伝統的なブルボン種。
非常に高品質なスペシャリティコーヒーです。
こちらのお店では、求めやすい価格はもちろん、注文後に焙煎してお送りしています。
日頃のブレイクに、冷めてもおいしい、すっきりなめらかな酸味と甘みの明るいコーヒーをお試しください。
進化が続くエルサルバドルコーヒーを味わおう
エルサルバドルのコーヒー産業は、外資の恩恵よりも自力で上質なコーヒー産出国に発展してきました。
コーヒー栽培に適した環境はもちろんですが、コーヒー生産に関わる農園主や関係者の努力が、プラスの結果をもたらしてきたといっても過言ではありません。
しかし、エルサルバドルに限らずですが、多くのコーヒー生産国は、地球温暖化による2050年問題に直面しています。
そこで、気温の上昇や病気耐性に強いコーヒーの開発が急務になっています。
高級コーヒーは、エルサルバドル経済の生命線。
30年後も、おいしいコーヒーを飲み見続けたいものです。