中央アメリカでNo.3のコーヒー生産国・ニカラグア。
とはいえ、日本ではまだあまりコーヒー産地としては認知されていません。
ニカラグアは、コーヒーで有名なコスタリカとホンジュラスに挟まれ、中米最大の国土面積をもつ自然豊かな国です。
今回は、ニカラグアのコーヒーの魅力に迫ってみましょう。
INDEX
ニカラグアのコーヒー豆の特徴
・ニカラグアのコーヒー年間生産量:141,931トン
・世界シェア:1.4%
・生産国量ランキング:13位
※2018年度調査(FAO国連食糧農業機関による統計より)
ニカラグアは、中央アメリカでホンジュラスとグアテマラに次ぐ、コーヒー生産量を誇ります。
ホンジュラスは、主に商業用コーヒーの生産、そしてグアテマラは、日本でもスペシャリティコーヒーの産地として有名。
しかし、コーヒー好きの方でも、ニカラグアのコーヒーについて明確なイメージを持っている方はまだ少ないと思います。
コーヒー豆産地としてのニカラグア
ニカラグアは、もともと熱帯性の気候ですが、コーヒー栽培が行われている国の中部は山岳地帯です。
ミネラルが豊富な火山灰質の土壌と、平均気温が24度という温暖な気候、そして乾季雨季で適度な降水量を確保できるため、コーヒー栽培に最適な条件が揃っています。
ニカラグアのコーヒー豆の主な生産地域は、マナグアと北部マタガルパ、ヒノテガ、ヌエバ・セゴビア等。
栽培地の標高は、多くの地域で500m~1000mほどで、ヒノテガでは1500m以上の山でも多く栽培されています。
また、ホンジュラス国境に近いヌエバ・セゴビアは、国際品評会で評価されるレベルの高級豆が生産されています。
なお、ニカラグアではロブスタ種の生産も行われていますが、全体の数%とごくわずか。
国内消費向けで、海外で見ることはほとんどありません。
ニカラグアのコーヒー豆の歴史
ニカラグアのコーヒー豆の歴史は、植民地時代に始まります。
ニカラグアは、コロンブスのアメリカ大陸発見以降、圧制と搾取の苦しい植民地時代をすごしてきた国の一つです。
ニカラグアへコーヒー栽培が伝わったのは、18世紀末。
しかし、栽培が本格化したのは、中央アメリカ連邦の解体から十数年後の1850年以降のことです。
ニカラグア政府が、コーヒー産業の発展を目指し、プランテーション栽培を推奨したため、コーヒーは大事な外貨獲得源として、経済を支える主要農産物へと発展しました。
しかし、ニカラグアはその後も不安定な政情や紛争が続き、人々の生活が脅かされたため、コーヒー栽培と輸送インフラの開発が進まず苦戦しました。
20世紀末には、政情が安定してきたものの、今度はハリケーンなどの自然災害やカビ病で大打撃を受けてしまいます。
しかし、国の経済を支えるコーヒー産業は進歩し続けています。
ニカラグアスペシャリティコーヒー協会ができ、2002年に初めてニカラグアでカップ・オブ・エクセレンス(COE)品評会が開かれました。
現在も研究熱心な農家が、コーヒー栽培と品質の向上をめざして奮闘しています。
政情不安や自然災害に悩まされ、コーヒーの産地としてのネームバリューはまだ高くありませんが、これから日本でも知名度が上がっていくことが予想されています。
ニカラグアのコーヒー豆栽培
ニカラグアのコーヒー産業は、大規模なプランテーションと、協同組合、そして小規模農園の集まりである生産者協会に分かれています。
栽培農園の規模は、米国農務省の統計(2017年)によると、全体の9割以上が1ha未満~14haの小規模農園で、残りは中~大規模農園(30ha未満)。
コーヒー農家の数は45,000以上と言われています。
山間部の斜面で栽培されるコーヒーの実は、シェイドツリーを使った有機栽培が多く、収穫は10月から翌3月にかけて行われます。
主にナチュラル(乾燥式)で精製されています。
しかし、最近の品評会では、ウォッシュト(水洗式)、またはパルプトナチュラル(半水洗式)の豆も多く登場しています。
- ナチュラル
ナチュラルでは、収穫したコーヒーチェリーをそのまま乾燥させて後、脱穀して生豆を取り出します。
風味にクリーンさを出すのが難しいのがデメリットですが、コーヒー独特の甘みを出しやすいというメリットがあります。 - ウォッシュト
ウォッシュトでは、収穫したコーヒーチェリーをまず水で洗い流し、“ミューシレージと呼ばれるヌルヌルとした粘液質を取り除きます。
水を大量に必要とするのがデメリットですが、欠点豆が少なく、クリーンで均一な豆が精製できるのが大きなメリットです。 - パルプトナチュラル
果肉を除去した後、ミューシレージを残したまま乾燥させる上記2つの中間のような精製方法。
ナチュラルより欠点豆を少なく、ウォッシュトのように大量の水も必要としません。
*ハニープロセスとも
ニカラグアのコーヒー豆の栽培品種は、豊富なバライエティが特徴です。
カトゥーラ、ブルボンのような定番品種のほかに、マラジゴッペやパカマラ、ジャパニカがその代表例です。
マラジゴッペは、ブラジルで発見された突然変異種の巨大豆。
また、パカマラは、パーカスとマラジゴッペを人工交配させたエルサルバトル産の品種で、中南米産コーヒーによくみられます。
そして、ジャバニカは、インドネシアのジャワ島からニカラグアにもたらされた希少な品種で、細長い形が特徴です。
ニカラグアのコーヒー豆の味の特徴
ニカラグアのコーヒー豆の特徴は、全体的にまろやかな甘さと口の中にほんのりと残る苦味。
穏やかで明るい酸味とボディ感で、チョコレートやバニラのような豊かで繊細なフレーバーを醸し出します。
バランスが良く、隠れたファンの多いコーヒーです。
また、希少なジャバニカ種は、特に甘いコーヒーとして有名で、柔らかな苦みとのバランスが口当たりのよいフレーバーをひきたてます。
一方で、マラジゴッペは、ハチミツやチョコレートのような独特な甘みと穏やかな酸味のハーモニーが魅力です。
おすすめの飲み方
ニカラグア産のように、ナチュラルで精製されているコーヒー豆は、若干浅めの焙煎度にすると、柑橘系やベリー系の仕上がりになります。
また、若干深めに焙煎すると、酸味が隠れて後味に残ります。
ニカラグア産らしい、バランスの良いナチュラルコーヒーを味わうには、中煎り程度の豆を中挽きにして、ハンドドリップで淹れみてください。
豆そのものの味に集中したいなら、フレンチプレスもおすすめです。
抽出方法によってコーヒーの風味も変化するため、手持ちの抽出道具で、味比べしてみてはいかがでしょうか?
ニカラグアのコーヒー豆の等級について
ニカラグアのコーヒー豆の等級は、栽培地の標高の高さが基準。
標高が高いほど、ミネラルや栄養分がしっかり詰まった良質なコーヒー豆になると言われています。
等級 | 条件 |
ストリクトリー・ハイ・グロウン (SHG) |
1,500m~2,000m |
ハイ・グロウン (HG) |
1,300m~1,500m |
ミディアム・グロウン (MG) |
1,000m~1,300m |
ロー・グロウン (LG) |
500m~1,000m |
おすすめのニカラグアコーヒー~Qグレードコーヒー豆
Exportadora Atlantic S.A.農園
ニカラグア産コーヒーの中でも、ヌエバ・セコビア産は、最近特に注目を集めている産地で、COEで1位入賞のスペシャリティコーヒーを輩出しています。
こちらのコーヒーは、ヌエバ・セコビアにあるExportadora Atlantic S.A.農園で栽培されたQグレード認定のスペシャルティコーヒーです。
甘く、後味にチョコレートのようなコクが残る深煎りコーヒー(フルシティロースト)で、マイルドなため特にコーヒーの酸味が苦手な人に最適。
敏腕ロースターの味は、ニカラグア豆の味を試したい人を決して裏切りません。
おすすめのニカラグアコーヒー~ニカラグアSHG
ニカラグアコーヒーの中でも、最高級グレードであるSHG。
スペシャリティコーヒーだからこそ、こだわりの豆を試したい、という人におすすめです。
最高級ならではのニカラグアらしい甘みとバランスの良い芳醇な香りとコクを味わいましょう。
コーヒー白豆屋・黒豆屋さんは、非常にリピーターが多いコーヒー豆屋さんです。
その秘訣は、導入されている最新焙煎機。
ドイツプロバット社の最新型のドラム型熱風焙煎機で、ムラなくコーヒー豆をベストな状態に焙煎することが可能です。
また、受注後に焙煎を行っているため、届く豆もとてもフレッシュ。
中米の逸品のニカラグアコーヒーを味わおう
ニカラグアでは、これまで個性豊かなスペシャリティコーヒーを生産してきました。
その知名度は、日本でも徐々に広まり、専門店で1杯を試せるほどになってきました。
マラジゴッペやジャバニカなどの希少豆を始め、今後も世界のコーヒー業者の関心を集めていくでしょう。
しかしここ数年、ニカラグアの治安は安全とは言えません。
2018年は、反政府勢力と政府側民兵との衝突で、非常に危険な状況になっています。
そのため、情勢悪化の影響で2019年のCOE品評会は中止になってしまいました。
長い間、内戦や革命など不安定な時代を乗り越えてきたニカラグア。
早く安全になって、世界中のコーヒー好きによりおいしいコーヒーを届けてほしいものです。