アフリカ東部の内陸国、マラウィ。
北の国境はコーヒーで有名なタンザニアに面し、質の高いコーヒー生産で注目の産地です。
ただ、日本ではほとんど流通していないので、目にしたことのない方も多いのではないでしょうか?
アフリカ産コーヒーと言えば、酸味と香り、そして独特な力強さをもつ豆が多いですが、マラウィ産のコーヒーはどうなのか、今回は、マラウィ産のコーヒーの特徴についてご紹介します。
INDEX
マラウィのコーヒー豆の特徴
・マラウィのコーヒーの年間生産量:11,082トン
・世界シェア:約0.11%
・生産国量ランキング:37位
※2018年度調査(FAO国連食糧農業機関による統計より)
日本の約1/3ほどの広さの高原国マラウィでは、アラビカ種コーヒーの生産を行っています。
生産量では、近隣国のブルンジに次ぐ世界37位。
決して多くはありませんが、ゲイシャなどの高品質なスペシャリティコーヒーに力を入れています。
コーヒー豆産地としてのマラウィ
マラウィは、タンザニアとザンビア、モザンビークに囲まれた細長い内陸国。
国土の約1/4は、アフリカの大地溝帯であるマラウィ湖が南北にのびています。
コーヒーベルト(赤道を挟んで南北それぞれ25度線の範囲)に収まるマラウィは、乾季と雨季のある亜熱帯気候ですが、国土のほとんどが高原地帯のため、温暖な気温を維持しています。
山岳地特有の朝夕の寒暖差と、肥沃な土壌、また十分な降雨量がコーヒーの発育に適していると言えるでしょう。
主なコーヒー栽培地は、北部ではチティバやルンフィ、ムズズ、ムジンバなど。
また、南部のブランタイア周辺で広く行われています。
マラウィの主要産業は農業で、全人口の約8割がタバコや紅茶、砂糖、コーヒーなどの生産に関わっています。
また、現地では人々の仕事と生活を維持するため農業協同組合が一般的。
特に、チティバ地区のコーヒー農協「ミスク・ヒルズ」は、多くの中小規模農家をサポートし、地域のコーヒー栽培を盛り上げています。
また、標高1,200m~2,000m越えの高地栽培を行っているムズズ地区でも、スペシャリティコーヒーの生産を積極的に進めています。
マラウィのコーヒー豆の歴史
マラウィのコーヒー豆の歴史は、英植民地時代の19世紀後半にさかのぼります。
イギリスは、南部に大型のコーヒープランテーションを作り栽培を始めました。
1964年にイギリスから独立し英連邦国家になりましたが、南部のムランジェ(Mulanje)やチョロ(Thyolo)では、現在も大型の農園が主に商業用のコーヒーを栽培しています。
マラウィは、他のアフリカ諸国と違い、独立後も戦争や内紛が起きていません。
そのため、“The Warm Heart of Africa”(アフリカの温かい心)と言われることも。
コーヒー産業は政情に影響されることなく、政府管理下にありましたが、90年代に民営化されると自由化が進み、急速に発展しました。
しかし、マラウィは、現在もアフリカの最貧国の一つ。
コーヒー栽培に恵まれた環境があるにもかかわらず、それを後押しする栽培教育およびインフラ整備が不足しています。
そこで、国際機関、コーヒー消費国のNGO、NPOによる支援が継続的に行われてきました。
高品質なコーヒーを公正に取引できるようにフェアトレード認証を得て、品質の向上と人々の生活に維持を目指し、現在も成長中です。
マラウィのコーヒー豆栽培
マラウィのアラビカコーヒーの品種は、病気に強いカティモア種やSアガロ、ブルボン種系列のムンド・ノーボやカトゥーラなど。
また、干ばつに強いSL28やエチオピア原種のゲイシャまで幅広く栽培されています。
北部の小規模農家は、約3,000名の組合員が所属するムズズコーヒー協同組合が、地域別に6つの農協をまとめています。
ミスク・ヒルズ、ビフィヤ・ヒルズ、ポカヒルズ、ムジンバ、カタベイハイランズ、チシの6つの地域農協では、コーヒーノキ数百本の小さな農家から数千本クラスの農家までさまざま。
特に、ミスク・ヒルズ農協は、ムズズコーヒー協同組合が販売するコーヒーの半分以上の収穫量があり、マラウィでも有数のコーヒー生産地域です。
マラウィ産コーヒーの精製方法は、主にウォッシュト(水洗方式)を採用。
山岳地のコーヒー栽培は、急な斜面で行われていることが多く、インフラ設備が行き届いていない農園も多いため、昔ながらの手作業です。
日照量や土質を調節するために、バナナやトウモロコシなどを一緒に植えるシェードツリーの有機栽培が行われています。
マラウィのコーヒー豆の味の特徴
マラウィのコーヒー豆の味は、マイルドな酸味と自然な甘みとコク、そしてスムースで柔らかい口当たりが特徴です。
アフリカ産でありながら、野性的な力強さはみられず、明るくクリーンな味わいで飲みやすいコーヒーと言えるでしょう。
エチオピアなど、「スパイシーな酸味が苦手…」という方にこそ試してみていただきたいです。
また、コーヒーは、焙煎度合いでも味わいが変わります。
軽く焙煎するとフルーティな酸味が、ダークローストではチョコレートのような甘みと風味が。
豆の持つ風味や旨味を、お好みの味わいで楽しめることが魅力です。
おすすめの飲み方
豆の品種にもよりますが、マラウィ産コーヒーを最も美味しく飲む淹れ方は、ペーパーフィルターを使ったハンドドリップやコーヒーメーカーがおすすめです。
ペーパーフィルターは豆の雑味をうまく遮断し、適度に酸味や香り、旨味を抽出してくれるため。
また、複数のコーヒー豆と味比べをするなら、フレンチプレスでもマラウィコーヒーの味を全面にだせてわかりやすくなります。
エスプレッソにして飲むなら、イタリアンロ-ストではなく、あえてミディアムローストにしてみてください。
豊かな香りと酸味が引き出されるでしょう。
マラウィのコーヒー豆の等級について
マラウィ産のコーヒー豆の等級の基準は、豆の大きさ(スクリーンサイズ)。
等級 | 条件 |
AAAスクリーン | S19(約7.5㎜)以上~ |
AAスクリーン | S18(約7㎜)以上~ |
ABスクリーン | S16(約6.5㎜)以上~ |
等級は、スクリーンサイズが大きいAAAが最も高いグレードとなっています。
以下、C、PB、E、TTと続きますが、日本でお目にかかる機会はほとんどないでしょう。
また、実際は、栽培銘柄によってもグレードは変わってきます。
例えば、栽培難易度の高いゲイシャ種は、やはり希少な高級豆として扱われますし、その反対にカティモア種は商業用コーヒーとして一般的です。
おすすめのマラウィコーヒー~ウォームハーツ
日本ではほとんど流通していないマラウィコーヒーですが、マラウィで活動するNGO団体『せいぼ』が独自のルートで良質な豆を入手してウォームハーツコーヒークラブで販売しています。
2,000m以上の標高で栽培されたマラウィ産のAAランクのスペシャリティコーヒーを注文を受けてから焙煎して発送してくれるため、非常に新鮮なコーヒー豆が届きます。
マラウィらしいマイルドでフルーティーな酸味にまろやかな甘味があり、アフリカコーヒーへのイメージが良い意味で壊される上質なコーヒー豆です。
また、この商品はNGO団体が販売しているため、焙煎や発送などにかかる費用はすべてスポンサー企業が負担し、売り上げのすべてがマラウィの子どもたちの給食事業に寄付されます。
おいしいコーヒーを楽しみながら、マラウィの次の世代を援助できる活動です。
コーヒーを通してマラウィを豊かに
コーヒーを通して、マラウィという遠い国が少し近づいてきた気がしませんか?
農業国のマラウィはコーヒー生産国として発展しながらも、依然として国民一人当たりのGDP(2018年)は、350USドル(4万円弱)。
ワースト3位です。
*グローバルノートによる「世界の1人当たり名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)」より
また、マラウィは、エイズのまん延や貧困、乳幼児死亡率や飲用水に衛生管理、児童労働など依然として多くの問題を抱えています。
先進国や、国際機関による支援は継続して行われていますが、経済的に安定した豊かな国づくりへの道のりは長いと言えるでしょう。
コーヒー産業は、技術支援や教育を通して地道に前進してきました。
スペシャリティコーヒーをはじめ高品質なマラウィ産のコーヒー豆には、この国のコーヒー農家の未来がかかっているといっても過言ではありません。
何気ないコーヒー1杯にこめられた現地の想いを感じてみませんか?