中米カリブ海に面した国、ホンジュラス。
近年、日本でも少しずつ知名度を上げているバラエティに富んだ特徴的なコーヒー産地です。
今回の特集では、そんなホンジュラス産コーヒーの特徴と種類、等級についてみてみましょう。
INDEX
ホンジュラスのコーヒー豆の特徴
- ホンジュラスのコーヒー年間生産量:481,053トン
- 世界シェア:4%
- ・生産国量ランキング:5位
※2018年度調査
ホンジュラスのコーヒーの年間生産量は、コーヒー大国ブラジル、ベトナム、インドネシア、コロンビアに続いて第5位にランクインしています。
そして中央アメリカ地域でも、コーヒー産地として有名なグアテマラやコスタリカ、ニカラグアなどをはるかに抜いて断トツ1位です。
しかし、これだけの生産量がありながら、ホンジュラスのコーヒー豆はこれまで日本ではあまり知られていませんでした。
そんな理由についても今回の特集では掘り下げてご紹介します。
ホンジュラスという国について簡単に確認
ホンジュラスは、マヤ文明や森林に隠れた古代大国コパンなど、神秘に満ちた国である一方、中央アメリカ諸国の中で最も貧しく、治安が悪い国といわれています。
ホンジュラスの面積は、日本の約1/3以下で、国民の多くがコーヒーやバナナなどの農業で生計をたてています。
GDPは日本の鳥取県とほぼ同じ経済規模といわれ、今も国民の6割が貧困状態にあるそうです。
そのため、日本のODA(政府開発援助)は、毎年、流通インフラや病院の建設などを含めた資金、開発援助をしてきました。
コーヒー産業支援では、ホンジュラス国立コーヒー協会を通してホンジュラスのコーヒー施設インフラの建設援助や、コーヒー生産者の研修を積極的に行っています。
コーヒー豆産地としてのホンジュラス
ホンジュラスは、国土の約80%が山岳地帯で1年を通して温暖で朝夕の温度差が大きく、肥沃な土壌でコーヒーの栽培に適した環境が整っています。
特にコーヒー栽培は…
- コパン
- サンタバルバラ
- モンテシージョス
など、グアテマラとの国境に近い内陸部を中心に展開されています。
中でもサンタバルバラは、ホンジュラスコーヒーの約1/3が生産されていることで有名です。
標高1000m越えの傾斜のある高原で、酸味と甘みのバランスのとれた良質のコーヒー豆を産出しています。
ホンジュラスのコーヒー豆の歴史
ホンジュラスのコーヒー豆の歴史は、1821年にスペイン支配が終わる数十年前に始まります。
中米諸国でコーヒー生産が始まり、ホンジュラスでも中部のエルパライソ県で作られ始めました。
しかし、グアテマラを始めホンジュラスの隣国は先に生産インフラが整備されて、高品質なコーヒー生産国としての地位を築きましたが、ホンジュラスは遅れをとってなかなか発展しませんでした。
そのため、お隣がスペシャリティコーヒーで有名になっても、ホンジュラスはコーヒーの処理および品質管理のインフラが不足していたため、ブレンド用の商業用コーヒーを輸出していました。
これがホンジュラスが中央アメリカでダントツの生産量を誇りながらも、コーヒー産地としての知名度が低い大きな理由です。
しかし、2000年代になってようやく農園のインフラ設備が整ってくると、ホンジュラス産コーヒー豆の品質が向上します。
特に生産量が増え始め、2004年にホンジュラスで初めてCOE(カップオブエクセレンス、国際品評会)が開催されると、一気に注目されて評価されるようになりました。
それ以降、毎年その価値の高さを証明しています。
日本でも“美味しいコーヒー豆の産地”として徐々に知名度を上げています。
ホンジュラスのコーヒー豆栽培
ホンジュラスで栽培されるコーヒー豆の主流はカトゥアイ種・ブルボン種。
ただし小規模農園によってはカトゥーラ種やティピカ種、その他の品種も幅広く栽培されています。
ホンジュラスでは、家族経営の小規模コーヒー農園が多く、国全体で70%は2ヘクタール未満(2万平方メートル)の農園です。
手作業で等級別に摘み取られたコーヒーチェリーは、水洗処理(ウォッシュド)で処理された後、アフガンベッドといわれる場所で乾燥させます。
ホンジュラスでは、コーヒー豆の品質向上とブランドイメージ向上のために国単位でコーヒー農家をサポートしています。
特に1970年に設立したホンジュラス国立コーヒー協会(IHCAFE)は、「サスティナブルコーヒー」を推進する国の機関で、小さな農園への融資を始め、コーヒー生産技術の教育と育成、管理から国内外取引にいたる過程を支援しています。
また、2004年には、IHCAFEはホンジュラス各地にカッピング学校を設立しました。
コーヒーの味を知る包括的な教育を行い、若者にコーヒー品質管理の専門キャリアを築く機会を提供しています。
このように、IHCAFEの活動を通して国を挙げてホンジュラスコーヒーの品質向上を全面的にサポートしています。
少しずつホンジュラスのコーヒーが日の目を浴びている背景はIHCAFEの存在なしに語れません。
ホンジュラス産コーヒー豆の味の特徴
かつては、ブレンド用として消費されることが多かったホンジュラスコーヒーですが、品質が向上し、ストレートコーヒーとして多くたしなまれるようになりました。
今では、ホンジュラスのコーヒー農園がそれぞれのこだわりを持った「シングルオリジン」を生産しています。
ホンジュラスのコーヒー豆は、バランスの取れたボディ感と、フルーティな酸味、そしてすっきりとした後味が特徴です。
ただしこれはホンジュラスコーヒーの平均値で、実際は農園ごとに栽培環境や収穫、精製に違いがあるため、収穫地域や生産者ごとに香りや味が変わってきます。
これが、ホンジュラスのコーヒー豆のおもしろいところです。
農園の顔まで見られるシングルオリジンでお気に入りのコーヒー豆を見つけるのもコーヒー好きの楽しみの一つですうよね。
おすすめの飲み方
すっきりとした飲み口が特徴のホンジュラスコーヒーは、コーヒー好きだけでなく苦いコーヒーが苦手な人でも比較的飲みやすいといわれています。
ホンジュラス産コーヒーのおすすめの飲み方は、豆のどんな特徴を楽しみたいのかによって変えるといいでしょう。
例えば、豊かな酸味を中心に楽しみたい人は、コーヒー豆をやや浅く煎った豆を中挽きにして、ハンドドリップでいれてみてください。
バランスよく楽しむなら、中煎り以上、中挽きにしてフレンチプレスやケメックスを試してみてもいいでしょう。
口当たりまろやかで飲みやすいコーヒーがいれられます。
ホンジュラスのコーヒー豆の等級について
ホンジュラスのコーヒー豆の等級は、生産地の標高によって決められています。
等級 | 条件 |
ストリクトリー・ハイ・グロウン(SHG) | 標高1200m以上 |
ハイ・グロウン(HG) | 標高900~1200m |
セントラル・スタンダード(CS) | 標高600~900m |
標高が高いほど、豊かな酸味と甘みを含む高品質のコーヒーを育てやすくなります。
特にホンジュラスコーヒーで最高級のSHGグレードは、グアテマラ国境に近い山岳部で収穫されるコーヒーが多く、苦み控えめでバランスの良いボディ感と、チョコレートのような風味をもつことで知られています。
おすすめの農園~La Minas農園
La Minas農園は標高1750mに位置する小規模農園です。
品種はアラビカ種の一種のカトゥアイで、優美な香りと酸味、滑らかなコク、フルーティーな甘いフレーバーを感じるコーヒーです。
同国の運営するIHCAFE(ホンジュラスコーヒー協会)による格付が行われ、近年目覚ましい品質の向上が注目されています。
アメリカスペシャリティコーヒー協会の関連団体にも認定されたスペシャリティコーヒーです。
高品質にもかかわらず、知名度からなのかコストパフォーマンスに優れているのも魅力です。
ホンジュラスらしい香り豊かなコーヒーを楽しもう
グアテマラやエルサルバドルの隣国で、同じく高品質なコーヒーを生育できる条件を持っているにもかかわらず、遅れて発展してきたホンジュラスコーヒー。
かつては、ブレンド用の安価な商業コーヒーのイメージでしたが、国を挙げてのコーヒー生産者の教育や支援を通して、徐々にホンジュラスコーヒーは正当な評価を得られるようになりました。
一人のコーヒー好きとして、ホンジュラス産コーヒー豆の進化を味わってみるのはいかがでしょうか?