ナスカの地上絵やマチュピチュなどで有名なペルー。
実はコーヒー生産量でも世界トップ10に入っているコーヒー生産国の一面も持ちます。
近隣諸国のコロンビア・ブラジル・チリなどと同じようにコーヒーが主要な輸出商品になっています。
日本では比較的マイナーなため、よほどのコーヒー好きでないとなかなか飲む機会がないかもしれませんが、今回はペルーのコーヒーの特徴・等級・おすすめの農園などについて解説していきます。
INDEX
ペルーのコーヒー豆の特徴
南米大陸の西側に位置するペルー。
年間のコーヒー豆生産量は約34万トン、世界7位となっています。
*2017年のデータ
ちなみに、1位のブラジルは約305万トンです。
ペルーでは、2010年に全米スペシャルティコーヒー協会(SCAA)の品評会で1位を獲得して以来、コーヒーの栽培が盛んになっています。
70年代に綿花にかわりコーヒーが主な輸出商品となり、現在では銅に次いで輸出商品として第2位です。
コーヒー豆産地としてのペルー
ペルーには近隣の国と同様に
- 標高の高いアンデス山脈
- 豊富な水量を誇るアマゾン川
- 1日の寒暖差が大きい
- 気温が20-30℃
というコーヒー栽培の好条件が揃っています。
中でも標高600~1500mで霜害も無い肥沃な中部のアンデス山岳地帯・北部のピウラから東南端にいたる地帯ではコーヒー栽培が盛んに行われています。
特にその中でも標高1000m以上で栽培されたものが高品質なものとされています。
コーヒー農家は数ヘクタール程度の小規模な家族経営の農家による有機栽培が中心。
日本に入ってくるペルー産コーヒー豆もオーガニックコーヒーが多いです。
ただし、小規模農園が多いため、インフラ等の整備が行き届いておらず、生産量が安定しないといった問題がこれからの課題として残っています。
ペルーのコーヒー豆の歴史
ペルーは地理的には南アメリカ大陸の西に位置しており、大西洋に面しています。
ペルーは13世紀にインカ文明ができて、16世紀にスペインの植民地になるまで様々な文化を築き上げてきました。インカ文明といえばマチュピチュやナスカの地上絵などが有名ですよね。
ペルーにおけるコーヒーの歴史のスタートは、スペインの植民地化からになります。
入植したスペイン人は気候に合った商品作物としてコーヒーの栽培を始め、ペルーは1821年の独立を経て現在に至りますが、コーヒーの栽培は引き続き行われペルーの主要な収入源となっています。
ペルーのコーヒー豆栽培
ペルーで栽培されるコーヒー豆は100%アラビカ種で、割合はティピカ70%、カトゥーラ20%となっています。
ペルー国内の25県中15県でコーヒーが生産されており、なかでも北部3県、アマゾナス、カハマルカ、サン・マルティンがシェアの6割を占めています。
*ペルーの高品質なコーヒー豆はこの3県で生産されているものがほとんど。
コーヒー農家はペルーに約22万世帯あるといわれており、そのうちの85%が3ha以下の小規模農家。
ほとんどが手作業で栽培され、こだわった有機栽培が行われているのがメリットですが、小規模農家なのでまだ生産性は低く安定供給も難しいのが現状です。
精製方法は非水洗式(ナチュラルプロセス)と水洗式(ウォッシュドプロセス)。
コピルアクに似た「カフェ・ウチュニャリ」
ペルーにはちょっと変わった精製方法のコーヒーもあります。
インドネシアにはジャコウネコがコーヒーの果肉を食べ、消化されずに排泄されたタネの部分から作るコピ・ルアクというコーヒーがあります。
そしてペルーにはハナグマ(ウチュニャリ)がその役目をするカフェ・ウチュニャリというコーヒーがあるんです。
日本では5つ星ホテルでコピルアクを提供するところがありますが、「カフェ・ウチュニャリ」を提供するところはまだ見たことがありません。機会があればぜひ飲んでみたいものです。
ペルーコーヒーの活性化を目指す「Cafés del Perú(カフェス・デル・ペルー)」
ペルーコーヒーを語る上で外せないのが「Cafés del Perú(カフェス・デル・ペルー)」。
ペルー輸出観光振興会は2018年8月にペルーのコーヒーの商標として「Cafés del Perú(カフェス・デル・ペルー)」を発表しました。
これは国を挙げてペルーのコーヒーのイメージアップと、国内消費の活性化を狙ったものです。
ペルー国内でのコーヒーの消費は未だ少なく、年間0.6kg程度です。
日本の3.6kg、コーヒー輸出国であるブラジルは5.9kgと比べても少なく、国内消費の増加も期待されています。
ちなみにペルーのコーヒーの輸出相手国トップ3は十年来アメリカ、ドイツ、ベルギーと変わっていません。3カ国で全体の6割を占めています。
日本は…15位。
日本人にとってペルーはコーヒー産地としてはまだまだマイナーな存在です。
生産性の向上と安定供給が進めば日本でもっとペルーのコーヒーを見かけるようになるかもしれません。
ペルー産コーヒー豆の味の特徴
ペルーのコーヒーは軽めのコクと南米独特のナッツ感があるのが特徴。
そして後味に甘みが広がるのがペルーコーヒーならではの大きな特色です。
全体としてはまろやかな苦めのコーヒーです。
日本人は酸味の強いコーヒーが苦手な方が多いので、ペルーのコーヒーは苦みを中心としたマイルドなコーヒーで日本人好みといえます。
なお、ペルー本国ではコーヒーを頼むと濃いコーヒーがお湯と一緒に出てきて、自分で濃さを調整しながら飲むそうです。
中南米のコーヒー産出国はどこも同じような課題を持っているのですが、ペルーの飲み方も品質の良いコーヒーは輸出されてしまい、低品質なコーヒーを飲んでいるのが大きな理由です。
おすすめの飲み方
- 焙煎
ペルーのコーヒーは浅く煎って仕上げると程良い酸味と爽やかな柑橘類の風味を感じます。
また、深煎りに仕上げると濃厚な風味と苦味を感じます。 - 飲み方
まずはストレートで飲んでみましょう。
南米特有のナッツ感をすっきり楽しみたいなら、ドリップで半分量だけ抽出して、残りはお湯を注ぐとエグミなどの雑味が抽出されていないすっきりとした味わいも楽しめます。
ペルーのコーヒー豆の等級について
コーヒー豆の等級は生産国によって様々です。
例えば、生産量世界一のブラジルでは欠点豆や異物の混入数、スクリーンサイズ、カップ(味わい)によって格付けされています。
ペルーのコーヒー豆は等級分けが少し複雑。
まず、選別方式によって以下の四つに分類されます。
ペルーのコーヒー豆の格付けと条件 | |
等級 | 条件 |
ESHP:Electronic Sorted & Hand Picked エレクトロニック ソーテッド&ハンドピックト | 機械式選別器と電子式選別器にかけた後、さらに人間の手でハンドピックが施されたもの |
ES:Electronic Sorted エレクトロニック ソーテッド | 機械式選別器と電子選別器にかけたもの。欠点豆11-40/300g |
MCM:Machine Cleaned Mejorado マシン クリーンド メホラド | 機械式選別器に二回かけたもの。欠点豆41-70/300g |
MC:Machine Cleaned マシン クリーンド | 機械式選別器に一度かけたもの。欠点豆71-100/300g |
表のように選別方法でまず4つの等級に分けられます。
そしてペルーのコーヒー豆はさらにそこからスクリーンサイズ(20-14)による格付けによって細かく分類されます。
おすすめの農園 La Naranja農園
2018年にCOE(カップオブエクセレンス)7位に輝いたカハマルカにあるLa Naranja農園のコーヒー豆です。
ダージリンやブラウンシュガーなどの甘みを伴うフレーバーと、心地よい酸味が特徴です。
標高1850mの高地で生産され、水洗式製法で作られています。
おすすめの農園 カフェ・オルキデア
実は「カフェ・オルキデア」の生産者は高橋克彦さんという日本人。
ペルーのオーガニックコーヒーを広めるために尽力する日本人としてテレビでも特集されたことのある方です。
「カフェ・オルキデア」は柔らかなコクと、後からじわじわと広がるペルー特有の甘みを特徴としてコーヒー豆です。
日本人らしい行き届いた栽培でコストパフォーマンスにも優れるので初めてのペルーコーヒーにおすすめです。
進化を続けるペルーコーヒーを楽しもう
今回は日本ではまだまだマイナーなペルーのコーヒーについてご紹介しました。
ペルーのコーヒーはほとんどが小規模農家の有機栽培で作られているのが特徴。
南米のコーヒー豆全体に共通する風味・ナッツ感・酸味を持ちます。また後味に続く甘みはペルーコーヒーならではの特徴です
。
インフラ整備や設備投資など、安定供給のための課題はありますが、高橋氏のようにペルーコーヒーの発展に貢献している日本人もいるため、これから日本でも知名度が上がっていくことが期待されます。
なかなかコーヒーショップにはおいてありませんが、ネット通販なら焙煎したての品質の高いペルーコーヒーが購入できるので、ぜひ一度試してみるのはいかがでしょうか?