
南太平洋に位置するパプアニューギニア(PNG)は、日本ではまだ知名度の高くないコーヒー産地ですが、高地で育つArabicaから華やかでクリーンなコーヒーが生まれています。
歴史をたどると、1920年代末にジャマイカから導入されたBlue Mountain系Typica、1930年代のBourbon、1950年にKenya経由で入ったArushaなど、個性的な品種が高地へ広がってきました。
現在はEastern Highlands、Western Highlands、Jiwakaなどを中心に、小規模農家とSigriのような農園が生産を支えています。
この記事では、パプアニューギニアコーヒーの味、産地、歴史、品種、等級、Blue Mountainとの関係、おすすめの豆まで分かりやすく解説します。
・味:柑橘、アプリコット、花、ブラウンシュガー、チョコレートなど。明るい果実感・甘み・コクのバランスが魅力です。
・主要産地:Eastern Highlands、Western Highlands、Jiwakaが中心。
・品種:Blue Mountain Typicaだけでなく、Bourbon、Arusha、Caturra、Mundo Novo、Catimorなどがあります。
・生産:国全体の85%以上を小規模農家が支えています。農園の規模だけで品質は決まりません。
・等級:現在の公的規格ではA・B・Y・Y2・Y3の品質区分を使い、必要に応じてScreen 18など豆の大きさを付記します。
パプアニューギニアコーヒーの味|爽やかな果実感と甘み、コクのバランス
パプアニューギニアコーヒーの魅力を一言で表すなら、「明るい果実感がありながら、甘みとコクも楽しめる」ことです。
高地で作られるWashedでは、オレンジやレモンなどの柑橘、アプリコット、ピーチ、花、ブラウンシュガー、チョコレートなどを思わせる香味があります。
一方、Naturalではベリーや熟した果実、ワインを思わせる香味が前に出るロットもあります。
| タイプ | 感じられることが多い香味 | 印象 |
|---|---|---|
| 高地Washed | 柑橘、アプリコット、花、ブラウンシュガー | クリーンで明るい |
| Waghi Valley系 | トロピカルフルーツ、チョコレート、キャラメル、スパイス | 甘みとコクのバランス |
| Natural | ベリー、熟した果実、ワイン、カカオ | 果実感が強く個性的 |
※スマホの方は横にスクロールできます。香味は産地・品種・精製・焙煎によって変わります。
「オセアニア・アジアのコーヒー=重く苦い」と考えていると、PNGの華やかさに驚くかもしれません。
マンデリンとは何が違う?同じインドネシア周辺でも別のコーヒー

パプアニューギニアはニューギニア島の東半分にあり、西半分はインドネシア領です。
そのため、「インドネシアに近いならマンデリンに似ているの?」と思う方もいるでしょう。
ただし、ここは地理的に少し整理が必要です。
マンデリンの主な流通産地はニューギニア島ではなく、スマトラ島北部のNorth SumatraやAceh周辺です。
| パプアニューギニア | マンデリン | |
|---|---|---|
| 主な地域 | ニューギニア島東部の高地 | インドネシア・スマトラ島北部など |
| 代表的な精製 | Washed | Wet Hulled(スマトラ式) |
| 香味傾向 | 柑橘、花、果実、甘み、クリーン | ハーブ、スパイス、重厚なボディなど |
※スマホの方は横にスクロールできます。実際の香味はロットによって異なります。
味の違いには産地・品種だけでなく、精製方法の違いも大きく関係しています。
PNGではWashedが重要なのに対し、スマトラのMandhelingではWet Hulledが広く使われています。
隣接する国だから似た味になるとは限らないという好例です。
パプアニューギニアの主要産地|Eastern Highlands・Western Highlands・Jiwaka

Arabica生産の中心は、ニューギニア島中央部を東西に走るハイランド地方です。
Coffee Industry Corporationが公表した2023年のデータでは、主要6州で国内生産の約99%を占めます。
| 州 | 2023年の構成比 | 特徴 |
|---|---|---|
| Eastern Highlands | 約41% | Goroka・Kainantuなど。国内最大の生産地域 |
| Western Highlands | 約21% | Mt Hagen周辺。Sigriなどで知られる |
| Jiwaka | 約18% | Waghi Valleyを含む重要なArabica地域 |
| Morobe | 約12% | Arabicaのほか低地ではRobustaも生産 |
| Simbu | 約6% | 山岳部の小規模農家が中心 |
| Enga | 約1% | 高地Arabicaの生産地域 |
※スマホの方は横にスクロールできます。
Eastern Highlands|国内最大の生産地域
Eastern Highlandsは、パプアニューギニアを代表するArabica産地です。
州都Goroka周辺やKainantuなどでコーヒーが栽培され、小規模農家のコーヒーガーデンも多くあります。
高品質ロットでは柑橘や花、果実を思わせる明るい香味を楽しめます。
Western Highlands|Sigriで知られる高地
Western Highlandsも、日本では特になじみのある産地です。
代表的なのがSigri Estate。Waghi Valleyの高地でArabicaを栽培し、丁寧な収穫・精製・選別を行っています。
日本でも長年Sigriの名前で販売されているため、初めて農園指定のPNGを飲む人にも選びやすいでしょう。
Jiwaka|Waghi Valleyを支える重要産地
2012年にWestern Highlandsから分かれて誕生したJiwakaも、現在は大きな生産地域です。
小規模農家が多く、コーヒーは地域住民にとって重要な現金収入源となっています。
85%以上を小規模農家が生産|規模だけで品質は決まらない
パプアニューギニアのコーヒー産業を語るうえで欠かせないのが、小規模農家の存在です。
現在、国内生産の85%以上を小規模農家が支えています。
自給用の作物やシェードツリーとコーヒーノキを組み合わせた「コーヒーガーデン」も広く見られます。
旧来は「大農園=高品質、小農家=低品質」と説明されることがありましたが、現在はそのように単純化できません。
小規模農家でも、
- 完熟チェリーを選んで収穫する
- 浮力選別を行う
- 果肉除去・発酵を適切に管理する
- 十分に乾燥させる
- 買い手までトレーサビリティを確保する
といった工程を整えることで、スペシャルティ水準のコーヒーを生産できます。
農園の大きさより、「収穫後の処理と品質管理まで追えるか」を見るほうが重要です。
パプアニューギニアコーヒーの歴史|Blue Mountain Typicaから始まった高地Arabica

パプアニューギニアでは19世紀末からコーヒー栽培の記録があります。
一方、現在の高地Arabicaにつながる歴史で特に重要なのは1920年代末以降です。
1920年代末|JamaicaからBlue Mountain Typicaを導入
Coffee Industry Corporationによると、PNGで最初に確認された主要Arabica品種がBlue Mountain C. arabica var. Typicaです。
Jamaicaから導入され、1920年代末にMorobe州のWauで育成されました。
これが「パプアニューギニアとBlue Mountainには関係がある」と言われる理由です。
1930年代|Bourbonが高地へ
Bourbonは1930年代、ルター派の宣教団によってPNGへ導入されました。
その後、Blue Mountain Typicaとともにハイランド地方へ広がっています。
1950年|ArushaをKenyaから導入
もうひとつ重要なのがArusha(アルーシャ)です。
CICはArushaを、Tanganyika由来のBourbon系East African selectionと説明しています。
1950年にKenyaからPNGへ導入され、Aiyuraでの試験後、1960年代のコーヒー生産拡大とともに広く普及しました。
Blue MountainやBourbonより多収だったことも、普及した理由のひとつです。
主な品種|Blue Mountain・Bourbon・Arusha・Catimorなど
| 品種 | 特徴・歴史 |
|---|---|
| Blue Mountain Typica | Jamaicaから導入。1920年代末にWauで育成 |
| Bourbon | 1930年代に導入された伝統的Arabica |
| Arusha | Bourbon系選抜。1950年にKenyaから導入 |
| Caturra | Bourbonの自然突然変異。1957年にPNGへ導入 |
| Mundo Novo | Typica×Bourbonの自然交雑。1962年に導入 |
| Catimor | さび病抵抗性を持つ系統。1980年代にPNGへ導入 |
※スマホの方は横にスクロールできます。
「PNG=Blue Mountain Typicaだけ」ではありません。
カリブ海系のTypica・Bourbonと、東アフリカ経由のArusha、さらに新しい品種が共存していることがPNGの面白さです。
Blue Mountainと同じコーヒーなの?
パプアニューギニアにはJamaica由来のBlue Mountain Typicaが導入されています。
しかし、PNG産を「Jamaica Blue Mountain」と呼ぶことはできません。
Jamaica Blue Mountain
→ Jamaicaの指定されたBlue Mountain地域で作られ、認証条件を満たしたコーヒー。
PNGのBlue Mountain Typica
→ Jamaicaから導入されたBlue Mountain系Typicaをパプアニューギニアで栽培したもの。
つまり、品種には歴史的なつながりがあるが、産地ブランドとしては別物です。
「Blue Mountainの偽物」「廉価版」と考えるのではなく、PNGという別のテロワールで育ったコーヒーとして楽しみましょう。
精製方法|中心はWashed
パプアニューギニアの高地Arabicaでは、Washed(水洗式)が重要です。
完熟チェリーを収穫したあと果肉を除去し、発酵・水洗を経てパーチメントの状態で乾燥させます。
この工程によって、柑橘や花などの香りを感じやすいクリーンなカップにつながります。
小規模農家では収穫後処理が品質を左右する
山間部では道路や輸送環境が十分でない地域もあり、農家自身が果肉除去・発酵・水洗・乾燥を行い、パーチメントの状態で販売することがあります。
そのため、同じ地域・同じ品種でも収穫後処理の精度によって品質差が出やすいのもPNGの特徴です。
近年はCICや研究機関などによる農家への技術支援も行われ、品質改善につながっています。
Naturalも選べる
中心はWashedですが、現在はNaturalなどのスペシャルティロットもあります。
Naturalではベリーや熟した果実、ワインを思わせる香味が強くなり、王道のWashedとはかなり違った表情を楽しめます。
パプアニューギニアの等級|「AA=最高等級」だけでは古い

日本では今も「パプアニューギニア AA」という商品名をよく見かけます。
しかし、現在のPNGの公的な生豆規格を理解するには、AAだけでは不十分です。
現在の品質区分はA・B・Y・Y2・Y3
PNG Standard 1626ではArabica生豆を、
- A
- B
- Y
- Y2
- Y3
の5つに区分しています。
| 品質区分 | カップ・欠点の主な考え方 |
|---|---|
| A | バランスがよくクリーン。明瞭なボディ・酸味・香り。最大10 defects/kg |
| B | クリーンで均一。中~高い酸味と明瞭なボディ。最大30 defects/kg |
| Y | 多少のばらつきがあるが、良好な酸味・ボディ・果実感。最大70 defects/kg |
| Y2 | カップにばらつきがあり、許容欠点数が多くなる |
| Y3 | 異臭・異味や異物などについて最低条件を満たす下位区分 |
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豆の大きさは別に付記する
A・B・Yについては、必要に応じてScreen 15~20などの豆サイズを末尾に付けます。
A=品質区分
18=Screen 18
という意味です。
PNGの輸出会社New Guinea Highlands Coffee Exportsも、2020年10月からの改訂Green Standardsについて、この表記方法を案内しています。
では日本で売られている「AA」は間違い?
一概に間違いとは言えません。
旧来の商品名や日本で定着した流通名称として、現在も「AA」が使われています。
ただし、「AAと書いてあれば現在の国家規格で最高ランク」という理解は避けたほうがよいでしょう。
購入するときは、等級名だけでなく、産地・農園・品種・精製・スクリーン・焙煎度まで確認するのがおすすめです。
パプアニューギニアにおすすめの焙煎度
| 焙煎度 | 楽しみやすい特徴 |
|---|---|
| 浅煎り~中煎り | 柑橘、花、アプリコット、ベリーなどの明るい香味 |
| 中煎り~中深煎り | 果実感、甘み、チョコレート、コクのバランス |
| 深煎り | ビターチョコレート、ナッツ、カラメル、しっかりしたコク |
※スマホの方は横にスクロールできます。
初めてなら、中煎り~中深煎りが分かりやすいでしょう。
華やかな果実感だけでなく、PNGらしい甘みとコクまでバランスよく感じやすくなります。
おすすめの淹れ方|まずはペーパードリップ

Washedの透明感ならペーパードリップ
PNGの王道Washedなら、まずペーパードリップがおすすめです。
中挽きを基本に、普段使っているレシピから始めてください。
「パプアニューギニアだから88~90℃」などと固定する必要はありません。
浅煎りなら高め、中深煎りなら少し低めから試すなど、焙煎度や豆の状態に合わせて調整します。
コクや質感まで楽しむならフレンチプレス
Sigriなど甘みとボディを持つロットなら、フレンチプレスもよく合います。
コーヒーオイルを含めて抽出できるため、チョコレート系の甘みや口当たりまで感じやすくなります。
おすすめのパプアニューギニアコーヒー2選
今回は、「農園指定の定番」と「高地小規模農家のWashed」という違いが分かる2タイプを選びます。
1.まず有名農園を飲む|土居珈琲 Sigri農園
パプアニューギニアを初めて農園指定で試すなら、土居珈琲のSigri農園は分かりやすい選択肢です。
現在も販売されており、土居珈琲ではアプリコットのような酸味と、ほのかなフルーティーな香りを特徴として紹介しています。
さらに土居珈琲では、不良豆を手作業で取り除くハンドピックを行い、焙煎したコーヒーを在庫せず、焙煎した当日に出荷しています。
産地の特徴だけでなく、焙煎後の鮮度や選別まで重視したい人に向いています。
「まず定番のPNGを、状態のよい豆で飲んでみたい」ならSigriがおすすめです。
\ Sigri農園の現在価格を確認 /
2.小規模農家のWashedを楽しむ|Highland Sweet
農園指定とは違うPNGの魅力を知るなら、現在流通しているHighland Sweet(ハイランドスウィート)も面白い選択肢です。
2026年の現行ロットでは、
- Typica・Arushaなど
- Washed
- 高地の小規模農家を中心とした原料
- SCA評価83点
として流通しています。
リンゴ、さくらんぼ、柑橘、ベリー、べっこう飴、アーモンドなどを思わせる香味が紹介され、明るい酸味とやさしい甘みのバランスが特徴です。
Sigriのような単一農園とは違い、PNGの小規模農家が支える高地Washedを知る入口として選べます。
\ Highland Sweetの販売店を確認 /
※価格・在庫・クロップ・品種・規格は変更されます。購入前に最新の商品ページをご確認ください。
パプアニューギニアコーヒーについてよくある質問
パプアニューギニアのコーヒーはどんな味ですか?
高地Washedでは、柑橘、アプリコット、花、ブラウンシュガー、チョコレートなどを思わせる香味があります。
爽やかな酸味と甘みがありながら、適度なコクも楽しめます。
パプアニューギニアの最高等級はAAですか?
現在の公的規格では、単純に「AAが最高」という仕組みではありません。
ArabicaはA・B・Y・Y2・Y3に区分され、必要に応じてA18のようにScreenサイズを付記します。
Blue Mountainと同じコーヒーですか?
同じではありません。
PNGにはJamaicaから導入されたBlue Mountain Typicaがありますが、Jamaica Blue MountainはJamaicaの指定地域で生産・認証されたコーヒーです。
Arushaとはどんな品種ですか?
ArushaはBourbon系のEast African selectionです。
Tanganyikaに由来し、1950年にKenyaからPNGへ導入されました。
Sigri農園は有名ですか?
日本で特によく知られているPNGの農園のひとつです。
ただしPNGの生産全体では小規模農家の比率が非常に高く、SigriだけがPNGコーヒーを代表しているわけではありません。
PNGとマンデリンは同じような味ですか?
かなり違います。
マンデリンは主にスマトラ島北部などで作られ、Wet Hulledが特徴です。
PNGの高地ArabicaはWashedが重要で、より柑橘や花、果実などを感じるクリーンなロットが多くあります。
カルディで買えますか?
パプアニューギニア産は時期によって量販店や専門店で販売されますが、常時同じシングルオリジンがあるとは限りません。
確実に購入したい場合は、オンラインストアの最新在庫を確認してください。
パプアニューギニアはBlue Mountainの歴史だけではない

パプアニューギニアには、JamaicaからBlue Mountain Typicaが伝わった興味深い歴史があります。
しかし、それだけでPNGコーヒーを説明することはできません。
Bourbon、Arusha、Caturra、Mundo Novo、Catimorなど多彩な品種があり、Eastern Highlands、Western Highlands、Jiwakaなど、それぞれ異なる地域でコーヒーが作られています。
さらに国内生産の85%以上を小規模農家が支えており、Sigriのような農園型のコーヒーとは違う生産背景もあります。
初めてなら、まずWashedの中煎り~中深煎りから試してみてください。
そこから、
- Sigri Estate
- Eastern Highlands
- Jiwaka
- Blue Mountain Typica
- Arusha
- Highland Sweet
- Naturalのスペシャルティ
へ広げていけば、PNGコーヒーの奥深さが見えてきます。
明るい果実感、やさしい甘み、しっかりしたコク。そのバランスのよさこそ、パプアニューギニアコーヒーの大きな魅力です。























