アフリカ東部、赤道直下のコーヒー生産国・ケニア。
ケニアと言えば、広大なサバンナと野生動物を思い出す人が多いでしょう。
実は、隣国のエチオピアやタンザニア同様、ケニアもスペシャリティコーヒーを語る上で欠かせません。
今回の特集では、ケニアのコーヒー豆の特徴について、その魅力を探ってみましょう。
INDEX
ケニアのコーヒー豆の特徴
- ケニアのコーヒー年間生産量:41,375トン
- 世界シェア:0.5%以下
- 生産国量ランキング:25 位
※2018年度調査 (FAO国連職業農業機関による統計より)
農業国ケニアでは、コーヒーと紅茶産業が盛んです。
紅茶生産量は、なんとインドに次ぐ世界第2位。
主にイギリスに輸出されています。
比べてコーヒーの生産量は、世界シェアの0,5%ほど。
多くありませんが、ドイツなどヨーロッパ向けに高値で取引されています。
コーヒー豆産地としてのケニア
ケニアでは、主にケニア山周辺の高原地帯でコーヒーの栽培をしています。
ケニア中央部の山岳地帯は、日光と降雨量が適度に保たれた酸性土壌で、朝夕の寒暖差が大きいことから、コーヒー栽培に適した環境が揃っています。
気温も、年間を通して平均19度ほどで、年2回雨季があり、収穫も2回行われていますが、1回目(3月~6月)よりも、2回目(11月~1月)のほうが高品質になっています。
アラビカ種とロブスタ種の両方を生産していますが、アラビカ種は1400m~2000mの高地栽培が中心で、主な生産地域は、ニエリ、キリニヤガ、エンブ、ルイル、チカなどがあります。
また、南部のタンザニアに近いキリマンジャロ山の東側も有名です。
これらのほか、ロブスタ種の栽培は、主にケニア西部の低地で行われています。
ケニアのコーヒー豆の歴史
ケニアのコーヒー豆の歴史は、北隣にあるエチオピアなどコーヒーの起源ともいわれる国と比べると古くありません。
1890年代、カトリック教会の宣教師がコーヒーを持ち込み、その後コーヒーの栽培は、ケニアがイギリス保護領になった頃、本格的に始まりました。
ケニアでは、ドイツとイギリスによる領土争いの後、英主導で国の産業が管理されました。
その結果、紅茶やコーヒーを含むケニアの農業が発展し、20世紀初頭には多くのプランテーションがあったそうです。
ケニアは、初期からコーヒー研究に注力しています。
1908年に植民地政府によるコーヒー研究財団が作られ、早い時期からコーヒー豆の栽培・品種改良・精製・取引まですべての分野で研究が行われました。
そのため生産量は少なくても、ケニアは高品質なコーヒー豆の産地として知られています。
ケニアのコーヒー豆栽培
ケニアのコーヒー豆の栽培は、多くの小規模農家と大規模なプランテーションに分かれ、合計約16万ヘクタールの土地で約600万人がコーヒー産業にたずさわっています。
ケニアで栽培される代表的なアラビカ種は、「ブルボン」や「ティピカ」。
そして、厳密には「SL34」や「SL28」などにわかれます。
「SL28」は、干ばつに強く風味豊かな特性をもつブルボン種です。
ちなみに「ケニア・マサイ」などの銘柄で売られているマサイコーヒーは、ケニアのプレミアムコーヒーブランドのこと。
最高級の「SL34」や「SL28」が採用されています。
ケニアのコーヒーチェリーは、主にウォッシュト(水洗式)で処理されます。
ケニアでは、大型プランテーションは別として農家一軒当たりのコーヒー生産量が極端に少ないため、豆の精製は主に「ファクトリー」という生産処理場に集めて行っています。
ケニアのコーヒー豆の味の特徴
ケニアのコーヒー豆の味の特徴は、やはりフルーティな酸味と深いコク、そして鼻に残る華やかな香り。
酸味が強いコーヒー豆のため、苦みや甘みは控えめですが、1日の寒暖差が大きい山岳部の高度栽培の豆の場合、
しっかりとした甘みをもつコーヒーもあります。
また、フレーバー自体は、ファクトリーによって大きく変わってきます。
例えば、コーヒー生産で有名なニエリ地区でも、「カラティナファクトリー」で精製された豆は、チェリーやラズベリーのようなさわやかな風味が特徴ですが、「カンゴーチョファクトリー」の豆は、トロピカルフルーツ、フローラルな風味があることが多いです。
おすすめの飲み方
ドイツを始め、カフェ文化が最初に花開いたヨーロッパで、広く受け入れられたケニアコーヒーのおすすめの飲み方は、ケニアコーヒーのどの部分をどう味わうのかによって変えるといいでしょう。
ケニアコーヒーのコクを思う存分楽しみたいなら、ハンドドリップがおすすめです。
この際、若干深煎りにした豆を中細挽きにして、ドイツ式にメリタのドリッパーで淹れてみてはいかがでしょうか?
酸味と苦みとコクのバランスがよく、すっきりとした1杯が楽しめます。
また、コーヒー豆の酸味やフレーバーを確認するなら、味のブレが少ないフレンチプレスが確実です。
ケニアのコーヒー豆の等級について
ケニアのコーヒー豆の等級は、豆の大きさ(スクリーンサイズ)で決められ、大きいほど高値で取引されています。
等級 | 条件 |
AA | 7.2㎜以上の大粒の豆 |
AB | グレードA(約6.5㎜)とB(約6㎜)が混ざっている |
PB | ピーベリー(コーヒーチェリー1個につき、2個ではなく1個の丸い豆) |
C | 6㎜未満の中~低ランクの豆 |
TT | 他のグレードに当てはまらない小さく軽い豆 |
T | 破片や不揃いな割れた豆 |
日本でケニアのコーヒーとして販売されているのは主に上から2つの等級であるAA・ABです。
PBは普段コーヒー豆全体から3%~5%しか取れないため希少性が高く、一部の愛好家からは非常に評価が高いです。
おすすめのケニアコーヒー~ムウィルア農協
ムウィルア農協の所在地は、ケニアの首都ナイロビの北東に位置するキリニャガ県ムクレ。
標高1600m以上の山岳地にある「カリアイニ・ファクトリー」では、1500の農家でとれた新鮮なコーヒーチェリーを精製しています。
ムウィルア農協の「カリアイニAB」は、カシスやベリー系の爽やかな風味とキレのある酸味に加え、重厚なボディ感が楽しめるケニアらしいコーヒーです。
こちらは、便利なドリップコーヒーパック商品のため、いつでも簡単に、家でも外でも、お湯さえあれば飲めてしまうこだわり高級コーヒーです。手軽にケニアコーヒーを楽しみたい方はぜひ。


おすすめのケニアコーヒー~ケニア世界規格Qグレード珈琲豆
ケニア山の山麓は、ケニアのプレミアムコーヒーの産地としてとても有名です。
その味は、ベリー系の明るい酸味とマイルドな苦み、強すぎないコクですっきりとしたケニアらしい飲み口です。
ご紹介の豆は、アメリカスペシャリティコーヒー協会の基準で、80点以上を獲得したQグレード珈琲。
香りを楽しみたいコーヒー好き、豆本来の味を楽しむサードウェーブ派の人は、ハンドドリップやフレンチプレスでどうぞ。


ヨーロッパで高く評価されるケニアコーヒーを味わおう
歴史は長くないものの、ヨーロッパのコーヒー需要に合わせて急成長したケニアのコーヒー産業。
今も一級品としてヨーロッパで愛され続けています。
現在でも、アフタヌーンティを始め、イギリスの紅茶文化を支えている生産国はケニアであり、メリタ式のドリッパーを生み出したドイツのコーヒー文化に深く根付いているのもケニア産のコーヒーなのです。
ケニアのコーヒー取引は、国内オークションによって売買されていますが、今後、ケニアのコーヒーの直取引が増えて、生産者がわかる価値の高い取引が増えれば、ブランド化されたケニアコーヒーが広く流通するだけでなく、ケニアの零細農家の生活の安定にもつながるでしょう。
何気ない毎日の1杯でケニアのコーヒー発展に貢献してみるのはいかがでしょうか?