アラビア半島南端の国、イエメン。
イエメンは、コーヒー豆の長い歴史を誇る産地であり、コーヒー産業発祥の地でもあります。
かつて、モカ港からイエメン産コーヒーが世界中に輸出され、モカ・マタリは「モカコーヒーの女王」と言われていました。
今回は、イエメンのコーヒー豆の特徴や魅力をご紹介します。
INDEX
イエメンのコーヒー豆の特徴
- イエメンのコーヒー年間生産量:19,338トン
- 世界シェア: 0.19%
- 生産国量ランキング:33位
※2018年度調査(FAO国連食糧農業機関による統計より)
アラブ諸国に隣接する「緑のアラビア」ことイエメンは、中南米やアフリカ大陸に比べると、コーヒー生産量は多くありません。
しかし、それでも「モカ・マタリ」などの高級コーヒーは、スペシャリティコーヒーとして高値で取引されています。
コーヒー豆産地としてのイエメン
イエメンのコーヒー栽培は、主に内陸や西部の山岳地帯でおこなわれています。
農園の多くは、標高1000m以上の高地にあり、ミネラルを豊富に含む火山質の土壌がコーヒー栽培に適しています。
年間の平均的な降水量は、1000㎜。
これは、他のコーヒー産地に比べると少ないですが、年間を通して温暖な気候と、朝夕の寒暖差が激しいことから、旨味が凝縮された良質なコーヒー豆を生産しています。
イエメンコーヒーの最も有名な生産地域は、バニーマタル地方。
イエメンコーヒーの中で、最も高値で取引されている「モカ・マタリ」が栽培されています。
このほか、サナア、シャーキ、ホデイダなどの地域でも栽培されています。
イエメンのコーヒー豆の歴史
イエメンのコーヒー豆の歴史は、産業化の歴史だけを見ても約500年前にさかのぼります。
コーヒーそのもののルーツは更に昔です。
コーヒーの起源は、エチオピア説が有名ですが、イエメンにもコーヒーのルーツに関する「オマールの伝説」というストーリーがあります。
そしてイエメンにてコーヒーの栽培が本格化したのは、西暦1400年頃。
コーヒー貿易は、1517年にイエメン知事によってトルコのオスマン帝国に献上されたのがきっかけでした。
現在、ユネスコ世界無形遺産にも登録されているトルコ式コーヒー(イブリック方式)は、この時代に始まります。
その後、イエメン産コーヒーは、ベニスの商人によってヨーロッパに渡り、18世紀前半には全ヨーロッパに広まります。
そして、その後の世界のコーヒー栽培は、植民地国でのプランテーションへと拡大していきました。
しかし、近代のイエメンのコーヒー産業は、困難を極めています。
イエメンの内戦と紛争が、経済の発展を妨げており、高品質のイエメンコーヒーはより入手しにくくなっているのが現状です。
「オマールの伝説」とは
領主の娘との不祥事を疑われ、町を追われていた修道者オマールが洞窟で飢餓と戦っているとき、鳥に導かれてコーヒーの実を見つけ、煮だして汁を飲んだら飢えと疲れが癒されたという話です。
真偽はともかく、イエメン版コーヒー発見と飲用の発端は、アラブのイスラム聖職者間で始まったというのが定説です。
イエメンのコーヒー豆栽培
イエメンのコーヒー豆は、種類も栽培方式も、過去500年間大きな変化はありません。
品種は、アラビカ種の原種に近いティピカですが、貿易港のモカ港を由来とする「モカ」というブランド名で表記することが多いです。
コーヒーの栽培は、海抜1000m~1700mの高原で行われており、ほぼ有機農法です。
家族経営の小さな農園で栽培され、精製はナチュラル方式(乾燥式)。
全ての作業を人の手で行っています。
イエメンのコーヒーの生豆は、加工過程で石臼を使って脱穀するため、豆が欠けやすくサイズもバラバラになることが多い傾向があります。
ナチュラルでは、収穫したコーヒーチェリーをそのまま乾燥させて後、脱穀して生豆を取り出します。
風味にクリーンさを出すのが難しいのがデメリットですが、コーヒー独特の甘みを出しやすいというメリットがあります。
イエメンのコーヒー豆の味の特徴
イエメンのコーヒー豆は、モカ特有の独特な味わいが特徴で、特別な魅力があります。
フルーティかつ個性的な酸味と、荒っぽい原生種が持つモカの香りが特徴で、一度飲んだら忘れられないコーヒーです。
また、イエメンコーヒーは、よく焙煎が難しいコーヒーと言われます。
というのも、焙煎の腕次第でその魅力を十分生かすこともできれば、その逆もあり得るためなのだとか。
豆から漂う芳醇な香りはもちろん、甘味とコクの複雑なバランス感のある高級ワインのようなコーヒーなのです。
「コーヒーの貴婦人」と呼ばれるモカ・マタリの魅力とは
「モカ・マタリ」とは、バニーマタル地域で収穫された高級コーヒーを言います。「コーヒーの貴婦人」と表現されることもあり、高値で取引きされています。
その魅力は、チョコレートのようなモカの香りと、フルーティで爽やかな柑橘系の酸味、そして、後に残るスパイシーさでしょう。
個性的な味わいのため万人向けではありませんが、世界のコーヒーマニアから人気の高いコーヒーです。
おすすめの飲み方
イエメンのモカコーヒーの良さを引き出す定番の抽出方法は、ハンドドリップがおすすめです。
中煎り、中挽きにしてよく蒸らしてから抽出して下さい。
雑味を抑えてすっきりとした酸味を味わうならペーパードリップを、モカ本来の甘みを楽しむならネルドリップが適当でしょう。
また、豆を挽く前に、焙煎された豆の状態と選別は、モカコーヒーの飲み方を決めるポイントになるので気をつけてみてください。
もし、欠点豆が多いなら、取り除いて挽いたほうが雑味が出にくいです。
*ただし、全部取り除いてしまうとモカらしさが薄れてしまうのが難しいところです…。
イエメンのコーヒー豆の等級について
イエメンのコーヒー豆の等級は、基本的に生産地域別になっており、その中で更に分かれています。
以下は一例ですが、等級分けに共通の基準があるわけではないようです。
産地 | 等級 |
バニーマタル | NO.9(最高品質) |
NO.8 | |
NO.7 | |
NO.6 | |
NO.5 | |
サナア | 上 |
下 | |
シャーキ | ー |
ホデイダ | ー |
イエメンのおすすめコーヒー
おすすめのイエメン産コーヒー豆を2つご紹介します。
フルーティで爽やかな酸味とチョコレートのようなモカの香りをご堪能ください。
モカ・マタリ NO.9 コーヒールンバ
名曲「コーヒー・ルンバ」にも出てくる「モカ・マタリ」。
「モカ・マタリNo.9」は、最高級コーヒー豆であり、世界のコーヒー好きを虜にしてきた逸品です。
こちらの商品は、受注後に必要な分だけ焙煎して送付するシステム。
そのため、新鮮なコーヒー豆を手に入れることができます。
開店17周年、熟練ロースターの焙煎技術が光る最高級のイエメンコーヒーです。
モカ・マタリ NO.9 コーヒー・ルンバの口コミ
バニ・マタル州のモカ・マタリ
イエメン産のコーヒーの生豆は、形が不揃いで、欠点豆や未熟成豆などが混入していることが多いです。
それは、モカ・マタリも例外ではありません。
問題は、そのまま焙煎して飲むと、せっかくの高級コーヒーの魅力が半減してしまうことです。
そこでモカ・マタリらしさを活かしつつ、ハンドピッキングをしてお送りしています。
舌の肥えたコーヒー上級者も満足できるように、直火焙煎でフルーティ感あふれるモカフレーバーを提供します。
バニーマタル州のモカ・マタリの口コミ
毎日 美味しく頂いてます。
サッパリと飽きない風味ですね。
香り高いイエメンコーヒーを味わおう
独特な酸味と芳醇な香り、またカカオのような甘みとコクがあり、不思議な魅力にあふれているイエメンコーヒー。
しかし、残念ながら、現在イエメンのコーヒー栽培は縮小の道をたどっています…。
長年にわたる紛争と内戦のために、物資の流通インフラは壊滅し、治安の悪さはシリア同様の危険レベル4の状況。
コーヒー産業を発展させるどころか、人々は命の危険にさらされている状況です。
もともと高地の山肌で行うコーヒー栽培は、機械化が難しく非効率でした。
諦めて換金性の高い「カート」という植物に移行する人も増加し、今ではかつて繁栄したコーヒー貿易の陰も感じられません。
それでも、日本を含め世界には、上質のイエメンモカをスペシャリティコーヒーとして扱い、直取引で輸入販売している業者がいます。
さまざまな思いを胸に、希少性の高いイエメンコーヒーを飲んでみてください。
普段のコーヒータイムとは一味違う、特別な時間になることでしょう。