アルコールランプの小さな火に照らされながら、ポコポコと音をたてて上下するコーヒー液。理科の実験のような器具を使って入れられるサイフォンコーヒーは、数あるコーヒーを入れる方法の中でもひと際高い演出効果が魅力です。
団塊の世代の多くの方にとっては懐かしく、若い人にとっては新しいサイフォンコーヒーで、コーヒーの新たな楽しみ方を満喫しましょう。
INDEX
サイフォン式コーヒーメーカーの歴史
実は、サイフォン式の正確な発祥はわかっていません。
しかし一般的には、1840年にイギリス人であるロバート・ネイピアによって作られたと言われています。
そして1840年代には、フランスやイギリス、ドイツなどで様々な改良が施されたサイフォン式が発明されていきます。
その中でも1841年にフランスのヴァシュー夫人が特許を取得したガラス風船型のサイフォンは、現代で私たちが使っているのとほとんど同じ形状のものでした。
今でこそメジャーであるペーパードリップが一般的になったのが1960年代と言われているので、コーヒーの抽出方法としては、ハンドドリップよりも歴史があります。
日本でのサイフォン式コーヒーメーカー
日本では1925年に「コーノ珈琲サイフォン」が国産初のサイフォン器具として販売されました。
1970年代の喫茶店ブームでは、多くの喫茶店がサイフォン式の器具を使用していたため、サイフォンでコーヒーを淹れる様子は、団塊の世代の方にとっては懐かしい光景の一つではないでしょうか。
比較的器具が高価なこともあり、一時期サイフォン式コーヒーメーカーを愛用する人は減少していましたが、最近ではその演出効果抜群の淹れ方と、日本人に好まれやすいまろやかなコーヒーが入れられる特徴が相まって、再び国内でもサイフォン式コーヒーの人気が高まっています。
2003年には、日本一の技術を競い合う「ジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ」に「サイフォン部門」が設置されました。そして2007年には「ジャパンサイフォニスト チャンピオンシップ」として生まれ変わり、優勝者は国代表として世界選手権にも出場しています。
「ジャパン サイフォニスト チャンピオンシップ」について詳しくはコチラ
サイフォン式コーヒーメーカーの仕組みや原理をわかりやすく
サイフォンはギリシャ語で「チューブ」という意味があります。
隙間をなくした管を利用して液体を低い地点から高い地点へと導くメカニズムのことが「サイフォンの原理」と呼ばれ、この原理を利用した抽出方法なためサイフォン式コーヒーと呼ばれます。
フラスコ内のお湯がアルコールランプの火によって加熱されると、
フラスコ内で水蒸気が膨張し、蒸気圧の力でお湯が上方のロートへと押し上げられます。
そこでロートに設置されたコーヒーの粉とお湯が混ざり、コーヒー液ができます。
アルコールランプを外すと今度はフラスコ内の水蒸気が冷えて収縮し、フラスコ内が真空状態になります。
そこでロートへ引き上げられたコーヒー液はフラスコ内への引き戻されます。この時に真ん中のネルフィルターでコーヒーの粉を濾過することで、コーヒーの抽出が完成します。
最近では、アルコールランプの代わりに、光を楽しむ視覚的効果もあるハロゲン熱源
を使用したものなど、趣向を凝らした器具も多数販売されています。
サイフォンの原理を利用した3タイプの抽出器具
サイフォンの原理を利用したサイフォン式の抽出器具には大きく分けると3つの種類があります。
1.ガラス風船型サイフォン
耐熱ガラスでできたフラスコとロートを組み合わせた仕組み。
一般的に“サイフォン式”といえばガラス風船型を指すことが多いです。
関連記事:サイフォンの選び方とおすすめのサイフォンランキング5選
2.ナピアー式サイフォン
出典:old coffee roasters
1840年台でこの抽出方式を発明したジェイムス・ロバート・ネイピアの名前が付けられた抽出方式。
ガラス風船型だと耐熱ガラスでできた2つのフラスコは上下に配置されていますが、ナピアー式の場合、左右に並べられているのが特徴。
フラスコは耐熱ガラスですが、ロート部分は金属製でできています。
3. 天秤式サイフォン
ナピアー式とほぼ同時期に考案された抽出方法で、発明したルイス・ガベットの名をとってガベットとも呼ばれます。
見た目はナピアー式とよく似ていて、フラスコとロートが左右に並べられています。
ナピアー式との違いは2つのパーツが天秤上でバランスを取っている点。
このため天秤式サイフォンと呼ばれます。
フラスコの下にはアルコールランプのキャップが取り付けられていて、ロート側にお湯がすべて移動すると天秤が傾き、アルコールランプの火を消します。
アルコールランプの火が消えると、温度が下がってフラスコ内が真空状態になり、コーヒーがフラスコへと戻ります。
サイフォン式コーヒーをおいしく入れる方法
サイフォン式は、コーヒー豆の挽き具合と量、そしてアルコールランプの火力と抽出時間をきちんと把握していれば、毎回同じ品質のコーヒーを入れることができます。
ただし、満足のいく品質のコーヒーが入れられるようになるまでは、何度も練習が必要になりますが、他のコーヒーメーカーと違い香り高いまろやかな味わいのコーヒーを楽しむことができるようになります。
サイフォン式コーヒーをおいしく入れる方法をご紹介します。
一杯分
お湯の量:160cc
コーヒー:約15g
挽具合:中挽き
1.器具のセット
ろ過器に専用の布製フィルターを被せてセットする。フィルターをロートの中に入れて真ん中になるようにセット。アルコールランプの火は弱いので、器具のセットを始める前に沸騰したお湯を準備しておきましょう。
2.お湯を沸かす
フラスコに一杯分のお湯を入れて、アルコールランプに火をつける。フィルターに付いているボールチェーンをフラスコの中にたらしておくことで、お湯が沸騰した状態がわかりやすくなります。
3.コーヒーの粉をセットする
あらかじめ量っておいたコーヒーの粉をロートの中に入れて、ロートをフラスコに真っ直ぐに差し込みます。
4.1回目の撹拌
お湯がフラスコからロートへ上がりきったら、1回目の撹拌。竹べらを使って、ゆっくりと円を描きながらロートの中でコーヒーとお湯がなじむようにまぜます。全体を数回混ぜたら約1分待ちます。
5.2回目の撹拌
待ち時間が終わったらアルコールランプの火を消します。2回目の撹拌も竹べらを使って全体を数回混ぜます。
6.コーヒーの抽出完了
あとは、じっくりとコーヒーが落ちてくるのを待つだけです。最初はゆっくり、最後は勢いよくロートからコーヒーがフラスコに落ちてきます。コーヒー液がすべて落ちたら、カップに注いで出来上がりです。
サイフォンでコーヒーの魅力を引き出す
適切な温度と方法で抽出するには練習が必要ですが、慣れれば安定して香り高いまろやかな味わいのコーヒーを入れることができます。
見た目にも演出効果の高いサイフォン式コーヒーメーカーで、コーヒーの新たな魅力を楽しみましょう。